親知らずの抜歯は、多くのかたが受ける処置ですが、「抜歯後にしびれが残ることがある」と聞いて不安に感じている人が少なくありません。
神経の近くに位置している親知らずの抜歯は、神経損傷のリスクが他の歯に比べると高いのですが、適切な検査と方法で抜歯することでリスクを抑えて行えます。
このブログでは、親知らずの抜歯に伴う神経損傷リスクの理由や神経損傷を避けるための抜歯方法を解説します。
目次
■親知らずの抜歯でしびれが残る可能性がある理由とは?
親知らずの抜歯後、数ヵ月経ってもしびれが解消されない場合は、抜歯時に神経を損傷してしまった可能性があります。
◎親知らずの抜歯でしびれが起こる原因
親知らず抜歯後にしびれを感じるかたは比較的多く見られます。局所麻酔の影響や腫れ、血種による圧迫などによるしびれは、放っておいても数時間~1週間程度で自然に改善されます。
しかし、しびれが長期間続く場合は、神経(下歯槽神経、舌神経)を損傷してしまった可能性があります。
下顎の親知らずがある近くには、舌神経と下歯槽神経があり、抜歯の際にそれらの神経を圧迫したり損傷したりしてしまうと、抜歯後にしびれや痛みなどが生じることがあるのです。
◎神経損傷によるしびれの症状
どの神経が損傷されたかによって、現れる症状が異なります。各神経が損傷されたときの症状は以下の通りです。
-
下歯槽神経:
下歯槽神経(かしそうしんけい)は、下顎の親知らずの下方の骨の中を走行しており、下の歯や唇の感覚を司っている神経です。下歯槽神経が損傷されると、下顎や下唇のしびれ、感覚が鈍くなるなどの症状が現れることがあります。
-
舌神経:
下顎の親知らずの内側を走行している舌神経は、舌の前方部分の感覚や味覚を司っている神経です。舌神経が圧迫されたり損傷を受けたりすると、舌のしびれや味覚異常が現れることがあります。
-
オトガイ神経:
オトガイ神経は、下歯槽神経につながっており、下の顎の先端を走行している神経です。下唇からあごの先端までの感覚を司っています。
親知らずの抜歯によりオトガイ神経が直接損傷されることはありません。しかし、下歯槽神経を損傷すると、オトガイ神経が司る下唇からあごの先端にかけてしびれや感覚異常が生じることがあります。
神経が損傷されると、治療を受けても回復までに数ヵ月~数年かかってしまうことがあります。まれなケースですが、後遺症として残ってしまうこともあるため、神経の近くにある親知らずを抜く場合は、特に慎重な処置が求められます。
■神経損傷リスクを避ける抜歯方法
親知らずの抜歯による神経損傷リスクを避けるためには、事前検査で神経と親知らずの位置を正確に把握し、状況に応じた方法で抜歯することが大切です。
◎親知らず抜歯の前に行う検査
親知らずを抜歯する前に、神経と親知らずの位置関係を正確に把握しなければなりません。一般的なレントゲン撮影(パノラマX線撮影)だけでは2次元的な位置しかわからないため、歯科用CTを用いて3次元的な精密検査を実施する必要があります。
親知らずと神経の位置関係を正確に把握することで、通常の方法で抜歯してもよいのか、神経を守るために別の方法をとるべきかが判断できます。
◎神経損傷リスクを避ける抜歯方法
親知らずを通常の方法で抜歯すると神経損傷のリスクがある場合、より安全性を重視した方法を取ることがあります。ここでは、神経損傷のリスクを抑える代表的な方法を解説します。
2回法(分割抜歯)
歯を一度に抜かず、分割して取り除く方法です。歯を分割して取り除きやすくしてから抜歯をすることで、神経損傷のリスクを抑えられます。必要に応じて歯を3分割や4分割に分けて取り除くこともあります。
また、親知らずを分割して取り除くと、周囲の組織への負担も軽減できるため、合併症のリスクを抑えることにもつながるという点がメリットです。
歯冠切除術(コロネクトミー)
歯の頭の部分にあたる「歯冠」のみを除去し、神経に近い部分はあえて取り除かず残して経過観察する方法です。
残した部分は、時間経過とともに骨と結合し、トラブルが起こりにくくなります。また、残した部分が移動して神経から離れ抜歯しても安全と判断された場合には、抜歯することもあります。
【痛みや腫れが少ない短時間での抜歯処置を心掛けております】
親知らずの抜歯に伴う神経損傷リスクの理由や、神経損傷を避けるための抜歯方法を解説しました。神経に近い親知らずを抜歯する場合、神経を損傷しないために専門的な判断と技術が求められます。
佐々木人吉駅歯科では、親知らずの抜歯について豊富な知識と経験を持った院長が担当しています。術中・術後の痛みや腫れを抑えるために、超音波切削器具「ピエゾサージェリー」を使用し、患者さんの負担軽減を心掛けた処置を行っています。
親知らずの痛みや抜歯を検討している人は、当院までお気軽にお問い合わせください。